□右と左に絆創膏
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「ぷっ……お揃いかよ」

「お揃い言うな」

「ボギーなに笑ってんだよ」



休み時間にむすっとした顔の2人が左右の頬に絆創膏を貼って帰ってきた。間抜けな光景に笑わないはずもなく、オレはおもいっきり吹いた。



「ほんとお前らって仲いいよな」

「誰がだ。テメーと一緒にすんなよ、手当たり次第に女に手をつけるボギーとは違うんだよ、オイラは」

「それどういう意味よ、ちょっと」



未だに不穏な空気を漂わす2人。そんな2人の空気を打破するように飛び込んできた声。その持ち主はセドルの彼女、だった。




「セドルくーんっ!ご飯行こうよ〜!」



さらさらのストレートの長い髪を揺らしながらセドルの近くまで来た彼女、愛ちゃん。



「あ、ごめんなー、愛ちゃんを迎えにいけなくて!全部こいつが悪いから」



言って笑いながらセドルが指差すのは名無し。明らかに、はあ?という顔をしている。愛ちゃんはそれをみてクスクスと笑う、けれども、頬に貼ってある絆創膏を見たときにその表情がほんの一瞬曇ったことを俺は見逃さなかった。



「人のせいにしないでくれますかー、バカ!」

「バカはお前もだろ!」

「もー、うるさい!あんた彼女を待たせてるんだよ!早く行きなよ」

「言われなくてもな!あ、ボギー!こいつ見張っとけよ!何しでかすかわかんないからな〜」




今にも手に持っていたペットボトルを投げ付けそうな名無しを制止しながら適当に返事をする。能天気なバカは愛ちゃんと仲良さそうに手を繋ぎ教室から出ていった。




「ちょっとボギー!なんで止めるの!」

「お前がペットボトルであのバカを殴ったらまた喧嘩になるって予測できるからな。それよりも飯食いにいくぞ」

「ご飯!?そうだった!早く行こう!」

「お前が暴れだしそうになんなきゃとっくに行ってんだよ」

「あら、それはどうもすんませんね!まあそう怒らないでよ、ボギー」

「お前に言われたくねぇ」






「おばちゃーんっ、カレーうどん1つ下さいな〜!」

「はいよ!」

「今日の気分はうどん〜!おばちゃんの作るカレーうどんは絶品!」

「うっせー、静かに食えよ。ほんとセドルがいなくてよかったぜ…あのバカがいたら煩さ二倍だからな」

「ほんとだよね。名無し、ポテト食べる?」

「ボギー、それは言わねぇ約束だぜ?ユー、いいの?ありがたいっ!」

「いいよ、全部あげる」

「うわああーいっ!ありがとう」



ご飯1つで機嫌が直り、今は美味しそうにユーのハンバーグ定食についてたポテトを頬張る名無し。





「お前、大丈夫なのか」

「ん?ふぁにが(なにが)」

「汚いよ、名無し。口の中のものちゃんと食べて」

「もぐもぐごっくん。ごめんなさい、ユー様。で?なにが、ボギー」

「セドルに彼女が出来て」

「………うん?何で」

「別に」

「ふーん?変なボギー」



変な間があった名無しだけど、すぐにいつもの名無しに戻り、何事もなかったかのようにズルズルとカレーうどんを啜る。




「よおっ!お前らーっ!」
「あ?」

「まだお前らに愛ちゃんを紹介してなかったじゃん!」



食堂に一際響くでかい声、その主はもちろんバカなんだけど、隣にはニコニコと笑う可愛いらしい彼女がいる。隣でカレーうどんを啜っていた名無しが、ごほごほ!と蒸せる。



「うわっ、汚ねーな!お前、なに蒸せてんだよ!あ、カレーうどん食ってんの!?オイラにも一口」

「え?いや、駄目だし!ってか、ちょっとセドル!」


普通にいつも通りのセドルに名無しは必死に死守しようとする。何だケチくせーぞ!と結局セドルに奪われてたが…いつもはここで喧嘩勃発するが名無しもさすがに空気を読み自分を抑えている、ってよりも、『彼女』を気にしてるらしい。ちらり、と視線が動く。




「ちょっとセドル!あたしのカレーうどん食べないでよ!」

「なんで、いーじゃん。あ、もう殴るなよ?これ以上ばんそーこーだらけになるのはごめんだからな!ついでにお前とお揃い言われるのも〜」

「それはあたしの台詞だっつの!」




カレーうどんを奪い返した名無しにヘッドロックをかける態勢だったセドル。面倒なことになる前に止めに入ったのはユー。




「それで、セドル?何しにきたんだったっけ?」

「ん?ああ、そうだった!お前らに紹介するな!オイラの彼女の愛ちゃん」




にこっ、と笑ってありきたりの形式的な挨拶をする女にしかオレは見えなかったが…名無しはカレーうどんから視線を離さずヘラヘラ笑っていた。






右と左に絆創膏


(二人ともまるでお揃いね)





セドルのバカは気付かないからいつもと一緒だったけど…あんなの、彼女からしたら面白くないに決まってるじゃん。只でさえ絆創膏お揃いとかからかわれてるところ見られてるんだから。だからあたしは気を使ってやったのに、けど何でこんなイライするわけ?






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ボギー視点からの主人公の心境でした
 

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