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□気にくわないあいつ
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女のクセに女にモテる。
運動神経がやたらいい。そんでもって、性格はサバサバしてて明るくてどっか抜けてるバカ。あ、バカはオイラも言えないか。一応制服はスカートをはいてるけど上はシャツの前を全開けで指定違反の派手なTシャツを着ている。まあ、これもオイラが言えることじゃないか。たまにセーターとか着てるけど。そんな色気も女っ気も全く皆無なこいつと、自然にツルむようになったけど、喧嘩はしょっちゅうあたり前だ。
「ういーっす!」
「うわ、なにお前。また何か貰ったの?」
「んー?うん、なんか1年の女子に貰った。クッキーだってさ!食べる?」
「あー?いらねーよ!バカにしてんのか」
「はー?それ以上バカにできないよ、可哀相で。クスッ」
「調子乗ってんじゃねーぞ、コラ」
「乗ってないし。てゆうかセドル、あんた英語やってきたの?確実当たるんじゃない」
「はっ!オイラがんなもんするわけないじゃん!」
言ったら名無しは、やれやれと言ったように飽きれた顔でオイラを見てきた。なにその目。ムカつくんだけど。抉るぞ。
「あれ、そういえばボギーは?」
「あ?ボギー?知らねーよ、朝からいねーもん」
「ふーん、またさぼり?または女か」
ガタン、と椅子に座りコンビニの袋からやきそばパンとコーヒー牛乳を取出してもさもさ食いだした。
「お前朝飯食ってねぇの?」
「食べたよ?でも朝練して腹ペコなんだよね」
「どんだけだよ、太るぞ」
「あたしの消費カロリーをなめんな」
もさもさやきそばパンを食う名無しのコーヒー牛乳を勝手に飲んだらおもいっきりぶん殴られた。
「ってぇ!てめーいきなり何しやがんだ!」
「あんたがあたしのコーヒー牛乳を飲むからだよ!誰が飲んでいいっつったよ!?」
「だからって殴る必要あんのか、コラ!」
ガァン!と力任せに名無しの机を蹴とばす。一瞬真ん丸く見開いた目はすぐに睨みを効かせてきた。
取っ組み合いの喧嘩になりそうな瞬間、
「ボギー、また告られてるみたいだよ」
ユーのその声にピタリと動きを止めたのは二人同時だった。二人してバタバタと窓際に駆け寄り身を乗り出してその様子を覗き見る。
「俺、特定の女いらねーから。遊びならいつでも付き合ってやるよ」
面倒くさそうに断るボギーを見て隣で名無しが顔をしかめながら呟く。
「うわ、女の子泣きそうじゃん。断り方サイテー。もっと優しく断れないのかよ〜」
なんて言ってたけど、オイラからしたら
「うおいっ!そこの女子!お前ボギーなんかに告るなんて視力悪すぎだろ!ボギーよりもオイラのがいい男だろーが!」
ええ?と戸惑う女子と、顕らかに面倒くせー、うるせー、って顔で見上げているボギー。
「ぎゃああっ!何やってんの!静かにしなって」
「ちょっと待ってろ!今そこに行くから!」
「ちょっ、落ちるよ、バカ!」
「お前どこに目ぇつけてんだ!」
ボギーに告っていた女を指差して、窓枠に足を掛け、身を乗り出し3階の教室から飛び降りようとした瞬間
「っんとに、いい加減にしろ!」
ゴッ!とおもいっきり脳天に食らわせられた容赦ないげんこつ。こいつ、ほんとに女か?マジで痛てー。
「てめー、名無し!調子乗るのもたいがいにしろよ!」
「どっちが!あたしは調子になんか乗ってないもんね!」
教室の空気が一気に悪くなる。
ガッ、と名無しの胸ぐらを掴む。普通の女ならこの時点で泣く。でも名無しはそんな女じゃない。むしろ胸ぐらを掴んだオイラの腕を反動にしてマウントポジションを取ってくる
「ふん!コーヒー牛乳の恨みじゃあああっ!」
「まだそれ引きずってんのかよ!ガキか、ぎゃはは!」
「はあ?ガキにガキって言われたくないわい!」
逆にオイラの上に乗っかりながら胸ぐらをつかんでゆっさゆっさ揺するなんて、絶対女と認めねぇ。さらにオイラよりモテる時点で、絶対認めねぇ!ぎゃーぎゃーとマウントポジションチェンジを繰り返す。
「お前ら、うるさい。廊下に立ってろ」
気が付いたらホームルームが始まっていて担任のクロマドに怒り浸透で引き剥がされた。そしてそのまま廊下に投げられたというわけだ。
気に食わないあいつ
とかなんとかいいながら、実際、仲は良いのである。
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ついにやっちゃったな〜
トリコに手だしちゃったな〜。しかし、セドルとかの喋り方ってこんなんでいいんだっけ?
って感じで美食會にもさもさ手をつけていきます←