Novel
□Be With You
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暗闇の中でも十分な彩度を放つ紫玉の瞳が俺を見下ろしていた。
彼の名前を口にしようとして息を少し吸い込んだとき、喉の違和感に声を出すことをやめる。
キラが、明確な意思を持って俺の喉に手を掛けていたからだ。
身動きが取れないのも、仰向けになっている俺の上にキラがまたがっているから。
暗くて表情は見えないが、笑っているわけでも怒っているわけでもない。
感情が読み取れない。
「君は、本当にそこにいるの?」
落とされた言葉は重みを持って圧し掛かってくる。
当たり前だという確信さえ、ゆるがせるほどに。
「君の記憶は本物?
その証拠はどこにあるの?」
信じていたものが揺るがされる恐怖。
徐々に息苦しさを感じ、絞めてくる手を掴んで必死に訴えるが、少しの思いも届きはしない。
「誰がそれを証明してくれるの?」
訳が分からなかった。
戦闘から帰ってきて倒れこむようにベッドで就寝して。
気付いたら叩き起こされていて。
キラが、馬乗りになって、俺の首を絞めてアイデンティティを壊そうとしている。
これのどこに現実を疑う余地があるというのか。
眠くて気だるいと思う気持ちも、
苦しいと思う気持ちも、
訳が分からないと思う気持ちも、
――でも、キラに殺されるなら別にいいか、と思う気持ちも。
もう、どうにでもなれと目を閉じて薄れ行く意識に全てを委ねた。