散りゆく桜の美しきかな

□来たるべき日
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「山崎君なりには頑張ったみたいだな。いつもはここまでしないだろ?」

「そうですね。では、後は任せるとしますか。もう一つ野暮用が残っているもので。」

山崎は手に持っていた鍵を手渡すと、そのまま蔵を出ていった。
終わったらこの鍵でしっかりと蔵の鍵を閉めておけということだった。
すぐ傍の木の机の上には南京錠が置いてあった。

─本当にしっかりした奴だよ。

「さぁて、時間も無いし、やるとすっか。」









「ねぇねぇ、山南さん。風邪大丈夫ー?ほら、これお見舞い品。」

布団に横になっている山南の側に足をぱたぱたさせながら寝転がって饅頭の箱を渡す藤堂。さらには頬杖までついている。

そんな藤堂の態度は気にせずに、ありがたそうに饅頭の箱を手に取る。

それを確認してから、にししっ。と笑う藤堂。皆がバタバタしている割には和んだ雰囲気の山南の部屋。

「すまないね。こんな時に風邪だなんて。」

「いーのいーの。今まで頑張ってたんでしょ?山南さんはさ。だから今のうちに休めって事だって。それさ、みつさんが選んできたから絶対に美味いからね。」

「へぇ。じゃあ安心して食べれるよ。」

箱を開けて綺麗に並んだ饅頭のうち一つを手にとって口に運んだ。

「それどういう意味っ?」

「ははっ、冗談だよ。冗談。まさか藤堂君が見舞いに来るとは思わなかったよ。」

「どして?俺ら同門なのに?ま、同門かってのは関係ないけどね。」

藤堂の言葉に微笑み、残った饅頭の箱を丁寧に包み直すと布団の横に置いた。

「さて、風邪が移るといけないから藤堂君はそろそろ戻ったらどうかな?」

「ホントはもっといろいろ話したいんだけどねぇ。…そういやぁさ、近藤さん達大変みたいだよね。近いうちに何かすげー事あんのかもしんない。じゃ、早く治してね。」

分かっているのか、分かっていないのかは山南には分からなかったが、悟った様な藤堂の眼に刹那ドキッとした山南だった。

ひらひら手を振りながら山南の部屋を後にする藤堂。山南は笑顔で手を振り返す。

廊下を歩く藤堂の足音だけが山南の耳に届いた。

─藤堂君、察しがいいよ。さて、私は風邪を早く治さないと。

「風が強い日…か。考えたものだな。」




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