散りゆく桜の美しきかな
□空腹の始まり
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文久三年 九月二十五日
─『壬生浪士組』改め『新選組』。
近藤さん達と共に新たな一歩を踏み出しすことになりました。
「総司ー。」
早朝、新選組屯所内に響く声。
その声の持ち主、土方歳三は沖田総司の部屋の前で止まる。
ガラリと襖を開けるとそこには寝ぼけ眼の沖田。
欠伸をしていてまだ眠そうだ。
目を擦りながら土方の顔を見上げる。
「総司…。早く顔洗ってこい。近藤さんがお前を呼んでるぞ。」
「近藤さんが!?」
その言葉にすっかり目も覚めたようで、ちゃっちゃと布団をたたむと、廊下をバタバタと走り去る。
「あー、そうだ。土方さん、後で永倉に俺の部屋来るように言っといてください!それじゃ。」
走りながら叫ぶ沖田。
無邪気で元気な少年の姿の様だった。
バタバタ…
「近藤さん、総司が参りました。」
部屋の前で止まると、少し崩れていた服をきちんと直し、言葉を発した。
するとすぐに優しい近藤の声が聞こえてきた。
「ようやく来たか。入りなさい。」
自らの手で襖を開けて沖田を部屋に入れる近藤。
─机といくらかの書物、刀、羽織り…特別な物こそないし、ホント質素な部屋。だけど俺が落ち着いていられる部屋の一つなんですよね。
「ここに座るといい。」
沖田は部屋に入り、襖を閉める。
それを確認した腰を下ろしながら近藤は手を一枚の座布団に向けてそう指示した。
すかさずその上にきちんと座る沖田。
背筋はピンと張っていて、両手は膝の上に置いてある。
「はい。…それで、話ってなんです?」
「話と言うのは総司の事についてだ。」
「…と、言いますと?」
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