背には誠一文字

□悪戯計略戦
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天気は晴天。
空には雲はなし。
気温もまずまずで過ごしにくい事のない梅雨明けの日。
蝉が鳴いているのが目立つほどに聞こえてくる。
ようやく梅雨が明けたおかげで隊士達の沈んだ気分も元に戻ってきていた。

いち早く明るくなったのがこの二人。

「沖田君、時は来たりだよ。」

「平助、早速行きますか?」

沖田と藤堂だ。

「今日は永倉非番みたいですよ。まさに絶好の機会です。」

「おっ、流石。情報早いねぇ。」

屯所のある八木邸の庭隅で二人ひそひそと話している。
庭の木や植物には昨日まで降っていた雨の名残として水滴が付いており、静かにぽたぽたと地面に落ちては消えていった。

「今回はこれを使おうと思ってます。」

「それ簪だよ?」

沖田の手には一本の簪が握られていた。
藤堂は簪を指差して首を傾げる。
その簪は、大した飾りもなくいたって目立つ処がなく質素な作りだった。
勿論、昔みつが使っていた物である。

「そうですよ。永倉にコレを差してしまおうって魂胆です。」

簪を持っている逆の手で、ぐっと拳を握り気合い十分だ。

「そりゃ、ぱっつぁん怒りそうだねぇ。」

「そりゃあ怒りますって。だって永倉の性格ですよ?きっと俺等に石投げてきます。」

「石って…。また原始的な攻撃方法を。」

沖田の冗談に笑いながら反応する藤堂。
行く末を想像してみるとますます笑えてきた。
いつもと言うほどではないが、この二人は永倉に悪戯を仕掛けるのが好きで、暇なら悪戯をする。
永倉の方が年上なのにも関わらず、ここまで出来る彼らは凄い、と山崎が語るほどだ。



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