05/14の日記
03:06
序章。
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いつからだろう。
寂しくて、泣きたくて、それでも泣けなくて。
ただ、云われるままに生きて来た。自分の意志とは無関係に。
姫乃はぼうっと窓から見える風景を眺めていた。
ただ、何もなくすぎてゆく日々。
自分はまるで、籠の中の鳥だった。
束縛され、どこにも行けない。何も赦されない。
外出の際は必ず送り迎えの車と付き人がいる。
監視されているようだ。
監視。
実際そうだったのかもしれない。昔はそれでも自由な時間はあった。
幼い頃に近所の子と遊んだ記憶が蘇る。
懐かしかった。
あのときの彼はどうしているだろうか。
姿が見えなくなってから、もう、ずいぶん経つ。
約束は覚えているだろうか。
…会いたい。
自分が神木の苗字を失って戻れなくなる前に。
コンコン…。
部屋の扉がノックされ、姫乃は振り返る。
カチャリとノブを回して入ってきたのは、神木家に 長年勤めている執事だった。姫乃を迎えにきたらしい。
豪華な振り袖に身を包んでいた姫乃は、全てを諦めて小さくため息をつき、椅子から立ち上がった。
「お嬢様、お出かけの準備が整っております。下で旦那さまがお待ちでございます」
執事は軽い会釈を送り、姫乃を誘導する。
姫乃は深いまばたきをして、表情を落としたまま、部屋を後にした。
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02:26
登場人物紹介。
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神木姫乃…神木財閥のお嬢様。
柿崎凛太郎…姫乃の幼なじみ。
悠…姫乃のお見合い相手。ほぼ婚約者。
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