NOVEL-1-

□夜はこれから
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だらしなく開いていた口が動いた。



「! 万事屋、起きてたのか?」
「あのねー深夜に電話鳴って
 あんなに戸を叩かれちゃ寝てても起きるっての」

ま、神楽は起きねェけどな。
と一言加えながら閉じていたアイツの目が開く。


寝たままで、不機嫌そうなその赤い目だけが
横に居る俺の方に向けられる。


「土方さぁ…何の少女漫画の台詞だよ、さっきの」
「そんなんじゃねーよ」
「じゃ、何?」
「…」


1ヶ月も逢えなかったのに、何だよこの態度。

やはり関係は平行線のまま。
むしろ右肩下がりなのでは。


「…やっぱりテメェは俺のことどーでもいいんだな」

「あ?そんなこと俺言って無い…って何すんだよ」


相変わらず表情も変えずに淡々と話す姿にイラ立ち
馬乗りになって圧し掛かった。
両手の腕を掴んで拘束すると、さらに不機嫌といった表情に切り替わった。


「痛てぇ、重てぇ、どけ」
「……黙れ」

コイツの減らず口を口唇で塞ぐ。瞬間身体が強張った。

これまた初めて触れたコイツの口唇は思いの外柔らかくて。

角度を何度も変えていくうちに、歯止めがきかなくなり今度は首筋に顔を埋める。


と、コイツの身体が揺れる。
次第に笑い声を伴って、全身でコイツは笑い出した。


「……何笑ってやがる」
「…く、だってさぁー土方、がっつき過ぎー!あはは!」

コイツは組み敷かれているというのに
目に涙を溜めるくらい大爆笑している。


また溜息が出た。

「…はぁ、そーかよ解ったよ」
「なにがー?」

「ホントに俺の事好きでも何でもねェんだな」

よく解った。
やっぱり浮かれていたのは俺だけで。

その現実がこんなはっきりと突きつけられている。


「…すまない、睡眠妨害して」

もう帰ろう。

そう思って腕を掴んでいた手を離す。



「おい!話聞けよ」

その少し怒ったような声と共に、右手首を掴まれた。

アイツの表情はそのままだけれども、口調はいつもよりも荒っぽくて。

「誰が好きでも無いって言った?
 誰がテメェのことどーでもいいって言った?」

掴まれた手首が少し痛い。

「…だって万事屋は、何も言ってくれねェし」


その俺の言葉に、はぁーっと大きな溜息をつかれた。


「…誰の為に、ここ何日か無用心にも窓も戸も全開で待ってやってると思う?」

「…え?」

「…だーかーら。
 お前1ヶ月くらい帰ってこないってアバウトな情報しかないから…
 何日の何時に帰ってくるとか知らねェし…
 きっと土方の事だから帰ってきたらここに一番に来るだろうから…」


だから、窓も戸も全開で?

「…そしたら俺が寝てる間に来ても大丈夫だろ?」

ここまで言わせんなアホ土方と最後は暴言を吐いてフイと視線を逸らして、掴んだ腕を離した。


あまりにその姿が愛しくて、再度その憎まれ口を叩く口唇を塞ぐ。
今度は短めに。


「銀時」

初めて名前で呼ぶ。
ずっと呼びたくて仕方なかったけど、やっと呼べた。

銀時はそう呼ばれて満足そうにこちらを見ている。

「なぁ、土方」
「何だよ」

視線はこちらを向いたまま、銀時は自分の寝巻の紐を解く。
自分で白い胸をちらりと開いて一言。


「気持ち良くなきゃヤだから」

視線はそのまま、挑戦的ににやりと笑うその口元。

「…上等だ」

そのまま吸い寄せられるように
白い肌に埋もれた。

減らず口ばかり叩くこの口から
色のついた声がでるのは数秒後。


そんな夜はこれから。










END



●あとがき●

はい。ヘタレひじーでしたw


一応、土方が銀時と呼ぶまではアイツとかコイツとかで、呼ぶ時は万時屋で統一してます。読みにくくてすみません。

つうか寝なきゃいかんのに突発でかきました…あはw

愛情表現下手な銀ちゃんも萌ゆるなーとかおもって書きました。



最後までお読みいただきありがとうございます!


2008.5.22







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