NOVEL-1-

□理由が欲しい
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「おい」



その声で現実に戻された。


声のする方に目をやると
あからさまに『不機嫌』と顔に書いてある土方の顔。




「あ、起こしちゃった?」
「あぁ」


土方は不機嫌そうにため息を吐くと、頭を掻いた。



「…お前さぁ」
「あ?」
「何か不安か?」
「!」



何?
俺の考えてること、わかってんの?



「ど、どーゆー意味だよ」



明らかに動揺してしまった。
俺から出た言葉は揺れていて。


それを聞いた土方も、体を起こした。




真直ぐ眼が捕らわれる。
捕まったら逃げれない濃い菫色。




「俺はお前の事、好きだぞ」
「…うん」
「お前がどう思ってるは良くわからんが、
 俺が好きって言ってんだから安心しろ」







正直拍子抜けした。

こいつは、俺の想いをどこまでわかっているのか?

…いや、おそらく何もわかってない。


ただ、無償でこいつは『好き』をくれる。
アホみたいにそればっか。



でもなんて心地よい。
…だから、俺こいつが好きなのかもしれない。


初めから「裏切る」だの「傷つく」など考えるのが馬鹿らしくなるくらい。




ありがとう。

どれだけその『好き』という言葉に救われたか。



「アホだな、やっぱり」
「あ?誰」
誰のことだよ?と不機嫌そうに続くはずったった土方の言葉を
口唇で塞いだ。



驚いた顔の土方が
あまりに滑稽すぎて。


思わず笑いが出た。


そういえば怖くて
自分からはこの言葉にしたことなかった。

今は特別に言ってみようか?



「好きだよ、土方」

















END















あとがき
はい。よくわからん感じでした。
馬鹿の一つ覚えのように「好きだ」と言う土方に、
救われている銀ちゃんでした。

お読みいただきありがとうございました!



2008.4.30









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