NOVEL-1-
□お仕事中です
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意外に、やさしーじゃねーか。
拍子抜けすんじゃん。
『お仕事中です』
はぁ------------……。
盛大なため息がこぼれる。
ちっこいおっさんの後ろを静々と歩く俺。
いくら仕事って言っても、こりゃねーよ。
遡る事1時間前。
「娘になってくれ!!!」
突然万事屋に来たちっこいおっさん。
万事屋の戸をあけるや否や娘になれ!と叫ぶ。
「銀ちゃん、ヘンタイアルか?このオッサン」
「あー?そーなんじゃね?おっさん店まちがえてんじゃねーの?」
おっさんを追い出そうとするとおっさんの反撃。
「人の話をきかんかいッ!!」
「ったーーーー!」
おっさんの脛キックは、見事に俺のスネにヒットした。
「一体どういった内容なんですか?」
新八がお茶を出しながらおっさんに尋ねる。
「実はな、今日娘のお見合いの日なんだが…娘に逃げらてしもーて」
「何で逃げたアルか?」
「それが…よっぽど娘はお見合いが嫌だったらしくて…。
相手のことも何も聞かずに頑なに拒否しよって…
2時間ほど前に姿をくらましてのう」
俺は先ほどやられたスネを摩りながら答えた。
「じゃ、その娘探した方が早いんじゃねーの?」
「そうですよ、その方がいいんじゃないですか?」
「もう時間が無いんだよ、それじゃ」
「じゃー断れば?お見合い」
「そーゆーワケにも行かないんだよ」
「何でアル?」
「相手は幕府のお偉がたの息子さんなんだ。断る訳にもいかないんだ。無理にこちらからお願いしたんだし」
「自分で蒔いた種じゃねーか。娘説得できなかったオッサンが悪いでしょ?自分でどーにかしろよ」
「娘には悪かったと思う。
だからとりあえず娘として見合いにでてくれないか?」
「「「はぁーーーー!?」」」
「何でそーなんの!?おかしーでしょ!話がッ!」
「そーですよ!もうここは潔くあきらめましょう!相手に謝りましょう!」
「そうアル!…銀ちゃん、ところでお見合いって何アルか?」
おっさんは動じず続ける。
「とりあえず、今日見合いをすればいいんだ。あとは断るのは問題ないはずだ。
もう時間が無いんだ!頼む!報酬は弾む!」
報酬は弾むの声にぴくりと耳を立てた。
「おっさん…ホントに報酬がっぽりくれんだろーな?」
「男に二言はねぇ。とりあえず俺の顔を立てろ」
「乗った!この話乗った!」
「ちょ、銀さん!簡単に話しに乗らないでくださいよ!」
「これでお菓子の家ならぬ酢こんぶの家に住めるアルね!」
「どんな家だよ、神楽ちゃん!」
話に乗ったはいいが、問題は誰が『娘』をやるかだ。
「って事で新八ー、頑張れ!」
「って僕!?無理無理無理!」
「だーって神楽じゃおこちゃまだろ?
何しでかすかわんねーだろ?」
「うっ!それはそうですが…」
「やっぱお前しかいねーよ、腹くくれ新八」
「いや、腹くくるのはお前だ」
とおっさんはビシっと俺を指指す。
「…え?何で俺?」
「お前が乗った話なら、お前がやれ」
「はぁああああああぁ!?
ちょっとそりゃねーんじゃないの!?」
机をバンと叩きおっさんの胸倉を掴む。
「賛成アル、銀ちゃん行って来るアル」
「そうですね、僕まだ子供ですし」
「満場一致のようだな」
おっさんがニヤリと笑った。
「さ、支度して行くぞ」
まじでか!
まじでか------------------!!!!!!
で。
現在に至る。
すっかりパー子衣装の俺。
お金が無いとあそこにはバイトに行くから
化粧するのも馴れた…。はぁ、嫌な特技。
ま、とりあえず。
お見合いっぽいことすれば良いんだろ?
あたし恥ずかしいの///みたいな感じで顔伏せてればばれねーよな?
後は座ってれば背で男だとばれねーだろーし。
はぁ。なんでこんなハメに…。
ついたのは、見事な庭園がある旅館であった。
「何で旅館?」
「ここは相手先が経営されている旅館だからな」
女将に案内された先は庭園が拝める立派な和室。
長四角い机の前に座るとお茶が出された。
「もうすぐでこられますので、ごゆくりなさってください」
そういって女将は去っていった。
って言われてくつろげるか、コノヤロー。
「あー…無駄に緊張してきた」
「あまり声をださなければ問題はなかろう」
「はいはい。ホントに報酬弾んでよ、おっさん」
ガラ
襖が開く音がした。