NOVEL-1-

□はじまりの唄
1ページ/1ページ




春の日

桜がきれいなこの川辺
意外に穴場のこの場所

自分しか知らないと思っていた



今日までは








『はじまりの唄』











久しぶりのオフに特にすることなんてなく。
宛も無くふらりと外へでた。


忙しくて気付きもしなかったが、世の中春の香りがしている。

ふと桜の綺麗な場所を思い出した。
この季節になるとよく一人で行ったもんだ。


久しぶりに訪れたそこは今まさに満開の桜。

やはり穴場で人は居なかった。
一番大きな桜の木の下に横になる。

いつもはせかせか働いてるこんな昼下がり。
久しぶりなゆっくりの時間に自然に顔が少し綻んだ。


「なーににやにやしてんの」

寝転んだ自分の顔をしゃがんで覗き込む銀色。

「…なんでお前がここに」
「そりゃーこっちのセリフだよ。ここ知ってんの俺だけかと思ってたのにさぁ」

そう言って横に座りなおす銀色い奴。

「お前仕事は?」
「今日はオフだ」
「ふうん」

万事屋は手にもっていたソフトクリームを食べだした。
まだ出会ったばっかりのコイツ。
甘いもん好きなんだな。知らないことも多い。

「で、多串君」
「土方だ」
「あ、土方ってんだ」

一瞬胸が跳ね上がった。
名前呼ばれただけなのに。

次の瞬間、風が強く吹いた。
花びらが舞って、銀色の髪と遊んでいる。
その色のコントラストが綺麗で正直びっくりした。

彼を綺麗だなんて思うなんて。
アホか俺は。











春の風が心も乱すように。

乱れたそのボサボサの髪を少し整えた万事屋が一言。

「ぎんとき」
「あ?」
「俺の名前」

「知ってるよ、んなこと」
「あっそ」
「呼べってか?」
「あ?バカいうんじゃねーよ」

そう言って立ち上がった万事屋。

「じゃお先」

なんだ、コイツ。
そんな残念そうな声で言うなよ。

散々人の気かき乱しといてさっさと居なくなりやがる。


ん?
何ご乱心してんだよ、俺。
ヤツ相手に。


とりあえず
「おい、もう帰んのか」
「あー」
「もう少し居ろよ 銀時」

背を向けた銀時の体が少し跳ねた。
立ち止まって背を向けたまま

「しかたねーな土方君は」
と小さく言った。

その姿が滑稽で。
なんだかこそばゆかった。
この気持ち、
春のせいじゃあるまい。


END












あとがき
ああ。だから何なんだよ、おまいら!
結局銀→土的な感じでもありましたが(汗)
といった感じで初作でした…。

ここまでお読みいただき感謝です!








.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ