Blue×Bluff
□darkness ogre-病み鬼-
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抜けるような青空って、こんな空のことを言うのだろうか。
昼休み、いつもより空が遠い。
だが積乱雲が高く沸き上がっているのは、ここからでもよく分かる。
四角い枠の中でも、屋上と同じ空だ。
「人魂と猫の妖怪が融合ねぇ…」
「あり?ということはリアル猫耳ですかにゃ?」
「いや…耳は生えてない」
俺は横で弁当をつまみ食いしている動物もどきを改めてじっと見た。
「いや気ィ抜いたら耳も生えるよ」
「え…マジで?」
マジですー。と眩しい笑い顔で、彼はメインのおかずであるエビフライを摘み上げた。
すかさず華麗なる箸さばきで奪い返す。
彼の歯が虚しく空気を噛んだ。
「あう…七海のいけず」
「そうじゃない。こんな場所でエビフライがいきなり消えたら怪しいだろうが」
こんな場所。
そう今俺達がいるのは屋上ではない。
昨夜の内に何者かによる謎の破壊活動が行われていたらしく、本日より暫く補修工事が行われるらしい。
全く誰がこんな非常識なことを。
誰だろうなぁ、心当たりなんか全くないぞ。
という不可思議で不本意な理由の為、今俺達は(仮結の提案により)家庭科部の部室にお邪魔させてもらっていた。
つまりは被服室なわけだが。
今は俺達以外に誰も居ないけど、万が一ということもある。
「用心深いんだから…誰も見てないって…ば!」
ぱくっと。
今度は直接噛みつきに来やがった。
不覚にも隙の無いモーションだったから避けられなかった。
もぐもぐと彼の口に吸い込まれていくエビフライ。
尻尾までバリバリ噛み砕いて、満足そうだ。
燕はその様子を、奇妙なものでも見る様な目でじーっと見ていた。
いや実際奇妙なものだろうな。
燕には彼が見えないのだから。
「えーっと?ここにいるのかにゃ?猫君は」
と、予測座標で手をぶんぶん振り回した。
「ちょ…いた!痛い!」
「おおーっ!バシバシぶつかる!実におもしろーい!!」
燕に往復ビンタされた彼は脅えて俺の後ろに逃げた。
あれ?消えちゃったと燕は残念そうにしている。
「もう!何なのアレは!?」
アレ…燕のことか。
「本当に見えてないの?見えてなかったら触れないはずだよ?しかも何となくの場所なら分かるみたいだし…力強いし…
彼女本当に人間なのかな?」
「俺に訊くな」
俺だってまだ確固たる確信が無いのだから。
しかも妙なものが見えるようになったからか…、燕ももしかしたらそういう類のものなんじゃないかと疑ってしまう。
「ねぇねぇ、キミノ、オナマエ、ナンデスカー?」
そんな燕は今も普通に彼と接している。
仮結は…さっきからあまり口を開かない。
早々に弁当を食べ終わり事の成り行きを傍観している。
「うーん。七海にいちいち通訳してもらうのも面倒だしな…。あ…そうだ!」